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プログラマティックバイイング最前線 CONNECTED TVによるデジタルオムニチャネルの拡大 -前半-

プログラマティックバイイング最前線 CONNECTED TVによるデジタルオムニチャネルの拡大 -前半-

はじめに

数年前に米国や英国におけるデジタル広告市場が、テレビ広告市場規模を上回ったというニュースを耳にして久しいですが、国内市場においても、6年連続で堅調な右肩上がりでの成長を見せるデジタル広告費は、2019年に初めてテレビ広告費を上回る形となりました。近年のデジタルインフラの著しい発展に伴い、生活者の行動様式、及び一日における可処分時間の使い方に変化が生じております。そのようなあらゆるインフラのデジタル化は、デジタル広告市場の一助になっているかと思います。メッセージを届ける広告主の見地からすると、適切な顧客接点を持つべく、経路のオムニチャネル性の意識、ひいてはWalled Garden(巨大プラットフォーマー間でのデータ分断)を意識したネットワーク選定や、クロスデバイスによるタッチポイントの分散化について、日夜考慮が余儀なくされる状態となっていると思われます。
本稿にて、インフラのデジタルシフトがテレビ広告市場にまで浸透している欧米市場に目を向け、最新のプログラマティックバイイングの在り方、テレビ広告のデジタル化による拡張されたオムニチャネルの可能性について焦点を当てていきます。
米国では2010年代初頭より、インターネット接続されたコネクテッドTV(以下:CTV)が登場し、以降OTTデバイス(※1)、STBデバイス(スティックデバイス含)(※2)、スマートTV(※3)、ブルーレイプレイヤーやゲーミングコンソール等を介したストリーミングサービスの視聴時間が伸長してきており、現在、従来のテレビのブロードキャストによる情報取得を享受するにとどまらず、CTVはデジタル上の「1デバイス」としての利用価値が高まっていると感じられます。(※欧州や他英語圏の国々においても、米国トレンドに追従する傾向)
私自身、米国に数年居住しスマートテレビやROKU(STB)を実際に利用しており、周囲の反響も含め、従来のテレビからCTVへ、生活者の可処分時間の使い方に変化が生じていることを実感しておりました。直近5年間の間に、欧米における広告出稿先として非常に勢いのあるCTVは、今や欧米の生活者内で欠かせない「1デバイス」となっており、コンテンツ消費の文脈で市民権を得たと言っても過言ではありません。
CTVをテーマにした本稿を前後半の二回に分けてお届けします。今回は前半部分として、様々な角度から見るCTVにおける市場伸長、CTVの実施利点について、順々に説明してまいります。

※1 OTT:通信事業者やISPに頼らず、インターネットを通じて提供されるメッセージや音声、動画等のコンテンツやサービスを指す言葉。ここではOTTビデオとして、接続されたテレビによるビデオコンテンツとして扱う(Over The Top)
※2 STB:テレビに接続することで、インターネット経由で動画配信サービスの映画やテレビ番組などをテレビ画面に映しだせる機器(Set Top Box)
※3 スマートTV:インターネット接続による機能拡張されたテレビ


CTV市場

CTV市場トレンドとデジタル広告下における影響力を掴むべく、下記切り口で説明してまいります。

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従来のテレビ市場とCTV市場の比較

1.CTV広告費(米国)
米国において、2010年初頭からCTVのインフラが整備され、徐々にCTV広告がデジタルマーケティング上で活用されるようになりました。下図から、2019年のCTV広告費は約7500億円となり、2023年には約2倍の約1.5兆円規模となる様子が伺えます。この数値から、デジタル広告費全体の約7%、メディア広告費全体の約5%近くを占めると予測されます。

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Source: eMarketer

2.CTV視聴人口(米国と欧州)
2020-2021年の間で、米国のCTV視聴者は約2億人存在し、米国の人口の約62%がCTVを視聴していることになります。このトレンドに呼応し、CTV広告在庫は年々増加傾向となります。

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Source: eMarketer

また、米国のみならず、西欧諸国においても、2016年から2020年にかけてCTV広告市場は劇的な拡大傾向となり、英国にて2倍、ドイツ・スペインにて約2.5倍、フランスにて約6.5倍、イタリアにおいて約10倍近くの跳ね上がりを見せております。

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Source: eMarketer

3.CTV視聴時間と従来型テレビ視聴時間
米国ユーザーの従来のテレビ視聴時間とCTV視聴時間の比較に目を移すと、2017年から2021年にかけて、視聴時間の増減が見て取れます。2010年代中盤におけるCTV視聴時間の伸長と比較すると、現在は緩やかな伸長率となっておりますが、引き続き視聴時間が伸びている一方で、従来のテレビにおける、コンテンツ消費時間の落ち込みが加速しております。

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Source: eMarketer

上述したように、従来のテレビ対比で欧州主要国におけるCTV人口、視聴時間が堅調な伸長率を見せ、広告主の広告投資対象先も徐々にCTVにシフトしていることが伺えます。勿論CTVのみならず、その他既存デバイスへ時間の使い方がシフトしている事象もございます。

他デジタルデバイスとCTVの比較

4.動画広告のインプレッションシェア
では、CTV市場をその他既存デジタルデバイスと比較した場合はどうでしょうか。
北米における、デバイス単位でのデジタル動画広告のインプレッションシェアに着目すると、2017年Q2はCTVのシェアが18%、1年後の2018年Q2には38%まで急増しております。
2018年Q1には、Desktop/laptopを上回り、2018年Q2にはSmartphoneを上回る結果となりました。この数値は、ユーザーが普段の生活の中で動画コンテンツを享受する際、より大きな画面で閲覧したいモチベーションがあり、またそれに呼応した広告費用の投下が如実に表れているとイメージされます。

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Source: eMarketer

5.各チャネル単位の広告費
CTV在庫枠が動画フォーマットにフォーカスされているため、視聴ユーザー・視聴時間の拡大により、動画インプレッションシェアが伸長していることに、さほど大きな反響はないかもしれませんが、デジタル広告全般での側面ではどうでしょうか。デバイス単位でのデジタル広告全体の投下費用において、CTVの広告費は小さいものの、 Desktop/Laptopとの差を埋めてきている状態であると伺えます。
2019年のDesktop/Laptop広告費 は、CTVの約3倍を占めておりましたが、 2023年には約1.5倍の広告費が予測されております。Mobileの広告費が依然右肩上がりを見せていることから、Mobileでの情報取得とCTVによる情報取得が伸長し、画面規模が中間に位置するDesktop/Laptopでの情報取得が落ち込み、二極化が進んでいくと予想されます。

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Source: eMarketer

CTV市場のユーザートレンド

6.従来型テレビ視聴トレンドとCTV視聴トレンド
最後に、拡大するCTV市場のユーザートレンドと対を成すTV市場におけるユーザートレンドを比較したいと思います。65歳以上の世代を除くと、過去10年で従来型テレビの視聴時間が減少しており、特に、10-20代やミレニアル世代での大幅なダウントレンドが顕著となります。

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Source: Nielsen

一方でCTVを通したストリーミングサービスを利用するユーザーは、18-34歳が43%と1番のボリュームゾーンとなることから、従来のテレビ視聴者の内、若年層の可処分時間の使い方に大きな変化が生じていると伺えます。

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Source: eMarketer

本章にて、CTVの市場規模を従来のテレビ市場やその他デバイス市場と比較してまいりました。結論、欧米諸国において、従来のテレビ市場がダウントレンドであり、CTV市場やSmartphone市場が伸長し、それに呼応して広告投下費用が伸長していることが伺えました。またユーザーのデモグラフィック情報の観点では、CTV市場にシフトするマジョリティ層はミレニアル層を初めとした若年層が中心であることが読み取れます。
次章から、具体的なCTVを実施する利点やケイパビリティについて詳説してまいります。

CTVを実施する利点

CTV市場が伸長する中、CTVをプロモーション施策の一部として実施する利点は非常に大きいことが伺えます。プロジェクトのグローバル化及び、インバウンド与件の需要が高まる昨今、CTVを実施する上で、その他利点について触れてまいります。
利点を大別すると、ブランディング要素とインプレッション補完要素の二軸に分岐できるのではないかと考えております。ブランディング要素としては、平均動画視聴完了率、及びビューアビリティの高さが際立ちます。これはユーザー意識の高さが要因の一つとして挙げられるのではないでしょうか。従来のテレビ広告の場合、「ながら消費」としてのコンテンツ消費が顕著である傾向であると思いますが、CTV広告の場合、コンテンツに注目して見ている瞬間でのメッセージングとなるため、定性的観点でもブランディング力があると考えられると思います。

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インプレッション補完要素に関しまして、まず既出である、テレビユーザーへのリーチシフトが挙げられます。ここで強調させていただきたい点は、テレビ広告を蔑ろにしてCTV広告を実施することが推奨されるわけではないということです。CTV広告を既存のテレビ広告と併用することで、高いユーザーリーチの確保にも繋がるというデータがございますので、あくまでCTV単一の考えではなく、従来のテレビ広告でリーチできなかった層へのリーチ補完として一考していただければと思います。

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Source: The Trade Desk internal aggregate reach measurement data from Q4
2017 Nielsen OTT studies for in-target demos

他方、インプレッション補完要素として、デジタルインフラ単位でのリーチシフトが挙げられるかと思います。以前まで、一日の可処分時間にテレビを視聴していたユーザー層に対し、新たなデバイスでリーチしつつ、従来のデジタルデバイスを含めたオムニチャネルでのバイイングが可能であることが、多くのデジタルマーケティング従事者にとって一番魅力的なポイントなのではないでしょうか。
リアルタイムでの配信経過から、デバイス単位での最適配分のプランニング、入札のアジャストメント、また成果地点までのアトリビューション分析が可能である点に、大きな可能性を感じます。特にオムニチャネルでのアトリビューション経路の可視化に着目したいと思います。普段、最終成果単価や費用対効果、Google Analytics等の計測ツールでユーザーの特定行動を成果として、キャンペーンの是非を問うケースが多く散見されますが、CTVを初め、既存デバイスにおけるインストリーム・アウトストリーム動画・オーディオ等、様々なフォーマットのキャンペーンをOne Platformで並走させることで、GAのクリックベースのユーザーインサイト分析のみならず、インプレッションベースでユーザーがどのような経路でサイト来訪したか分析が可能となります。これにより、ユーザー行動の分析材料が増え、次回のPDCAサイクルに繋げやすいと考えられます。またNielsen・Kanterといった調査企業によるCTV単一によるブランドリフト調査も可能となります。
下図は、ユーザーへのタッチポイントから自社サイトまでの誘引経路、及び経路単位でのGAイベント発火率とクリック率を四象限に展開した例

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最後にお伝えしたいCTVを実施する利点として、「他者を交えた情報の共感性」を挙げさせていただきます。従来のモビリティに富み、スマート化されたデジタルデバイスにおきまして、アドテクのお家芸である、オーディエンスデータを用いたOne to Oneコミュニケーションによる「情報の自分事化」が急速に加速してきました。大画面コンテンツを複数人で享受するCTVの登場は、ある意味アドテク黎明期以前のメリットを含んだ形態であるのではないかと考えております。つまり従来のマスメディアの有する、第三者を交えた、共感性を帯びた情報取得が可能となり、一方で他者の意見を交えることにより、発信されたメッセージの是非の再認識が可能になると感じております。

さいごに

CTVをテーマとした本稿の前半部分として、CTVの市場傾向・実施利点についてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。次回は従来のテレビとの差異を交えたCTVのケイパビリティ・CTVのパブリッシャーサイドについて触れていきたいと思います。



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この記事のライター

結城 浩史

結城 浩史株式会社ハートラス

トレーディングディヴィジョン プロフェッショナル

米国ニューヨークでの出版企業を経て、2015年に株式会社ハートラス入社。広告運用コンサルタントとして60社以上の運用コンサル業務に従事。2017年より、複数の官公省庁及び独立行政法人のデジタルプロモーション設計と戦略を担当。グローバルのデジタル情報及び、プログラマティックバイイングのエコシステムに熟知。
※2017年全社年間MVP ※運用プラットフォーム数:50PL以上 ※実績国:80カ国以上

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