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プログラマティックバイイング最前線 オン・オフラインを紡ぐDIGITAL OUT OF HOMEの可能性 -前半-

プログラマティックバイイング最前線 オン・オフラインを紡ぐDIGITAL OUT OF HOMEの可能性 -前半-

目次

はじめに

アドバタイジングテクノロジー(後述:アドテク)の発達により、直近十年余りの間に、パーチェスファネル上の各ペルソナ像に対する、適切且つパーソナライズ化されたオーディエンスへのコミュニケーションが至上命題となり、日々広告主、代理店で議論が飛ぶようになってきたと感じます。またアドテク領域のみならず、マーケティングテクノロジー(後述:マーテック)や下支えするデジタルインフラの著しい発展が大きく寄与し、より精緻なターゲティングが求められる時代になってきました。一方で、直近問題とされる個人情報保護法改正に準拠するcookie-less対処に向け、ターゲットへのアプローチの在り方について、プラットフォーマーサイドを中心にProbabilistic Data(ユーザー不確定情報)とDeterministic Data(ユーザー特定情報)の両側面から、業界全体で考慮が余儀なくされる時代となっております。これに伴い、パーソナライズされたデジタルデバイス上にて、コンテンツ文脈に沿ったアプローチ方法(プレイスメント軸への予算シフト)やPrivate Market Placeや予約型広告(アッパーファネル層への予算シフト)による情報の拡散性に再度脚光を浴びる形になるのではないかと考えております。
このような「デジタルインフラの発展」と再度注目を集めると予想される「プレイスメント&アッパーファネル向けアプローチ」の二軸を踏まえ、本稿にて、少々視点を変え、私たちが通常デジタルマーケティング上でアプローチする、モビリティに富んだデジタル小型デバイスの枠を超えた事象について触れていきたいと思います。
本稿にて詳説したい内容は、プログラマティックバイイングにおける新領域である「Digital Out Of Home(デジタル屋外広告 後述:DOOH)」についてとなります。インフラのデジタライゼーションが小型のパーソナルデバイスのみならず、テレビ広告市場(コネクテッドTV ※1)や屋外広告市場にまで拡張される昨今(※2)、デジタルのオムニチャネル化が急速に拡大化しており、既存のインターネットメディアのみならず、マスメディアやプロモーションメディアへの浸透を通じて、プログラマティックバイイングの在り方に新たな付加価値を与えております。マーケティング目標に向けた経路のオムニチャネル性の意識を持つ上で、DOOHを3rd Party Device(ユーザー視点 ※Mobile/PC/Tablet=1st Party Device)と捉えるのであれば、適切な顧客接点を持つべく、よりクロスデバイスによるタッチポイントの分散性について、近い将来考慮せざるを得ないのは想像に難くありません。
本稿では、前後半の二回に分けて、DOOHのケイパビリティ、及びその可能性について説明させていただきます。今回は前半部分として、既にDOOHが浸透する欧米市場に焦点を当てて、市場規模や実施利点、影響力について触れてまいります。

※1
:プログラマティックバイイング最前線 CONNECTED TVによるデジタルオムニチャネルの拡大 -前半-
:プログラマティックバイイング最前線 CONNECTED TVによるデジタルオムニチャネルの拡大 -後半-
※2
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DOOHについて

Digital Out Of Home(DOOH)はデジタル屋外広告の意となり、街中の大規模ビジョンから、交通機関に設置される小中規模サイズのデジタルスクリーン等に掲載される広告を指します。ユーザーの外出時、自身の保有するデバイスを利用した情報取得を除いた、移動時間が主なタッチポイントとなります。各デバイス対比でDOOHを比較すると、下図(※1)のようになり、一番の特徴はコミュニケーション手法がこれまでのアドテクのお家芸である「One to One」ではなく、「One to Many」となる点になると考えられます。これまで、テレビ広告による情報拡散が一般家庭内になされていましたが(現在はテレビも一人に一台の時代となる)、見ず知らずの第三者を含めた情報伝達となり、個人バイアスのかかる価値基準を超えた情報共有、ひいては共感性を含んだ情報認知が可能になるかと存じます。
※1 出典:Verizon Media
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OOHを取り巻く概念の呼称定義とそれに紐づくケイパビリティについて留意する必要があるため、下図(※2)のように、予約型/非予約型か、アナログ/デジタルかを各象限にプロットして紹介させていただきます。紙媒体を初めとしたデジタル要素を含まない従来式の予約型広告を「OOH」、予約型・運用型(非予約型)含めたデジタルサイネージ広告を「DOOH」と総称します。本稿にて紹介させていただくのは、主にコントローラブルなデジタルサイネージ広告(Programmatic DOOH ※後述DOOH)とさせていただきます。
※2
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ここで、何故DOOHのプログラマティック化が進んだかについて、少々触れていきたいと思います。従来式のOOHでは、メディアオーナーも多岐に渡り、メディア単位、配信先のサイズに即した煩雑な在庫予約管理が余儀なくされ、ユーザーへのタッチポイントを十分に考慮した戦略が隅々まで行き届かない事象が発生する傾向にあります。またその他デジタルデバイスの利用が活発になる一方で、その他プロモーション対比で広告効果の可視化が進まないこと、OOH施策の単独化、また施策毎の一貫したオンオフ分析が難しいこと等が課題として挙げられるかと思います。(※3)
そのような課題点に対し、各メディア、デバイス横断した自動取引プラットフォーム構築に向けた通信基盤の構築、入稿規定の整備はさることながら、各SSP社のDeal IDのeCPMが、既存プログラマティックソリューションで導入されたRTB取引(※4)を元に整備されてきたことにより、直近10年余りの間に徐々にProgrammatic DOOHの出稿基盤が整えられてきました。
※3 出典:Verizon Media
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※4 出典:Clear Channel Outdoor(DOOHのプログラマティックバイイングシステム概略図)
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DOOH市場

前章まで、DOOHの基本情報に触れてまいりましたが、本章にてその市場規模について、欧米の市場を中心に、説明させていただきます。※本章で紹介するDOOH市場規模はRTB経由のプログラマティック配信のみならず、予約型デジタルサイネージとの合算値となります。

2020年における世界と米国における従来式OOHとDOOHの市場割合トレンド

まず、従来のOOHとDOOH、各々の市場規模について目を向けてまいります。DOOH全体の広告費は、300億ドル (約3兆円) 規模、その内、約30%をDOOHが占有する形となり、従来式OOHからデジタルシフトが進行する結果となります。一方で米国の2020年DOOH広告費は、37億ドル (約4千億円) 規模となり、DOOHの占有率はグローバル傾向と同様、30%程で推移しております。その内、米国は一番、プログラマティック配信枠を多く保有し、その他デジタル施策と連動した取り組みが多数存在します。またOOH市場において、米国がグローバル全体の約40%を占めていることから、DOOHにおける米国市場規模の大きさを改めて感じさせられます。
※出典:eMarketer
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米国における従来のOOHとDOOHの広告市場推移

次に、OOHのグローバル市場で非常に存在感のある米国における、直近10年間のOOH・DOOHの市場規模推移について触れてまいります。直近数年間で、従来のOOHからデジタル化が徐々に進み、近未来においても同様の伸長率で市場規模を拡大する様子が伺えますが、その他従来メディアにおけるデジタルシフト(例:テレビ市場対比)と比較して、まだ浸透率が緩やかな形となります。
※出典:eMarketer
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※出典:eMarketer
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英国におけるDOOHの広告市場推移

米国のみならず、英国においても、直近10年間で、DOOHの市場規模は右肩上がりに拡大傾向となりますが、市場成長率は2010年代中盤より徐々に低下傾向であると伺えます。欧州において、歴史的建造物が市中に数多く存在し、文化として根付いているため、OOHのプログラマティック化によるブランドセーフティの低下が懸念されているのではないでしょうか。左記問題は欧州のみならず、既出の米国においても考えられ、OOH市場全体のデジタル化が進みづらいのではないかと予想されます。
※出典:eMarketer
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大陸間を跨いだグローバルのDOOH市場割合推移

グローバル全体において市場規模が伸長するDOOHは、北米・欧州のみならず、APACにおいても市場が右肩上がりとなっております。APACの場合、豪州でのDOOH適用例が多く、豪州による市場占有率が高い状態となります。
※出典:MarketsAndMarkets
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日本市場におけるOOHとDOOHの広告市場推移

一方で、日本におけるDOOH市場はどうでしょうか。日本において、2018年度以降、DOOH市場の成長率の高まりを見せており、OOHに対するDOOHの浸透率はグローバル対比でも遜色ない規模で推移しております。しかし、日本においては、プログラマティック化による在庫アクセスがグローバル対比で遅れている現状となり、予約型サイネージ広告が主流となっております。昨年より、日本初のRTBを経由したDOOH広告在庫へのアクセスに向け、LIVE BOARD社がシステムインテグレーションを進めており、今年SMN社がサービス連携したことにより、DOOHのプログラマティック買い付けが可能な状態となりました。今後国内においても、プログラマティック化されたDOOHをマーケティングプロモーションの一部として実施できる土壌が更に整備されていく見込みとなります。
※出典:2016 Dentsu Advertising Expenditure of Japan for 2014, 2015 Fuji Chimera Research Institute, Survey on Digital Signage
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DOOHを実施する利点

グローバル全体でRTB経由のDOOH在庫が徐々に増える中、DOOHをプロモーション施策の一部として実施する利点は非常に大きいと感じられます。プロジェクトのグローバル化、及びプロモーションのオンオフ施策の統合需要が高まる昨今、DOOHを実施する上での利点について、本章にて説明させていただきます。
利点を大別すると、「柔軟なバイイングを介した効果的なブランディング」と「その他デジタル施策との連動性」の二軸に分岐できるのではないかと存じます。
まず効果的なブランディングについて触れてまいります。DOOHのみならず、OOH全体としての利点として、その他多勢の「第三者を交えた情報伝達・情報共感」が可能となることが挙げられ、個人バイアスのかかる「既に自分事化された情報享受」ではなく、出稿物とその他景観と併せ、世の潮流・流行物として情報伝達させることができるかと存じます。また、既出の従来型OOH対比でのプログラマティックDOOHの利点を挙げると、柔軟性の一言に尽きるかと存じます。個々人の興味属性が様々なベクトルの向き具合、またその鋭利性により、形作られると考えた場合、興味の鋭利性にボラティリティが多い、一極集中の拡散方法より、個々人の興味が一定数向けられる集合地点(イベント等)への拡散を通じた情報伝達が、情報の吟味性を高めると考えられます。従来の予約型OOHは、ユーザーの流動活性時間や出稿先立地状況を鑑みての事前出稿プランニングの策定に留まりますが、プロモーション期間中に柔軟にプレイスメントへの在庫アクセスを可能とさせるDOOHのプログラマティック配信は、第三者を交えた情報伝達が、高い次元での情報獲得を加速させる可能性がございます。一方で、一極集中での情報拡散との併用も重要であると考えられるため、単にOOHのプロモーション予算の全てをRTB経由の在庫に投資するのではなく、予約型広告として、大規模ビルボードへの出稿も併せて出稿し、効果的にブランド刷り込みすることが望ましいと考えます。
ここでもう一方の利点、「DOOHのプログラマティック配信による、その他デジタル施策との連動性」について、触れてまいります。デジタルインフラの向上・コンテンツの充実により、一人一台スマートフォンを所持する昨今において、在宅時、外出時問わず、日々情報に接する時間が多いと考えられますが、果たして、私達が普段プロモーション上実施するオンライン広告は、ユーザー接触において必要十分でしょうか。本稿でお伝えしているDOOHによる影響力を差し引いたとしても、依然としてオフラインによる情報接触が多いのではないかと想像されます。DOOHのプログラマティック化は、一日のユーザーのライフスタイルにおける可処分時間を柔軟に埋める役割があり、従来のデジタルデバイスで接触を逃していたオフラインユーザーへの接触機会を促進させる働きがあります。またDOOHへの出稿を一部の広告メニューとして捉えるのではなく、その他施策と連動したオムニチャネルでのバイイングが可能であることが、一番の魅力ポイントなのではないでしょうか。プロモーション期間中のリアルタイムでの配信経過から、DOOHを含めたデバイス単位での最適配分再プランニングとエグゼキューション、入札のアジャストメントが可能である点に、大きな可能性を感じます。またプラットフォーム上の自動最適の考えはさることながら、DOOHの広告コンテンツ内のQRコード読み取りから、モバイルデバイスへ行動置換を促進することも可能となり、単なる運用上のデバイス横断による連動のみならず、ユーザー行動のデバイス横断連動の性質も見られます。2010年代の中盤に、ジオフェンシング・フットプリントを初めとしたジオグラフィックターゲティングが登場しました。これに伴い、ユーザーのリアルなオフライン上の行動データを元にした施策や、来店計測等、アドテクに新たなKPIが付加され、オンオフ分析の重要性が業界内で説かれて久しいですが、別の視点でDOOHのプログラマティック配信の登場を捉えると、真にリアルなオフライン環境をタッチポイントにしつつ、オフラインのKPIまで計測できる環境に達したと考えられます。換言すると、出稿元を始点、成果地点を終点と置いた場合、現代は既存デジタル環境と併せ、クロスコミュニケーションが可能になる時代に差し掛かり、マーケティングプロモーションの幅に大きな広がりを見せる形となっております。
※Programmatic DOOHの実施利点
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※下図:「自分事化された情報と他者との共有情報」軸、「屋内外のユーザーへのタッチポイント」軸をプロットした図
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DOOHの影響力

DOOHの影響力について、接触したユーザー反応の研究事例を元に、幾点か紹介させていただきます。Xaxis社、Nielsen社の調査報告やイタリア市場におけるDOOH活用の研究結果から下記内容が挙げられます。
・ 52%のオーディエンスがOOH広告に注意を向ける(※1)
・ OOH広告露出後、81%の都在住のオーディエンスが行動に移す(※1)
・ 一日におけるユーザーの情報タッチポイントとして、可処分時間の消費時間が第3位(※1)
・ モバイルと併せることで通常のモバイル広告より、303%のリーチ獲得が可能であり、68%のブランド認知力上昇に繋がる(※1)
・ TV・ラジオ・出版物によるマス広告対比で、4倍のオンライン購買活動への影響力がある(※2)
・ ソーシャルや検索行動等のオンライン行動に4倍もの影響力を与える傾向がある(※2)
・ DOOHを実際に活用したデジタルプロモーションの結果から、週単位でのユーザーのオフライン行動に変化が生じる傾向(※3)
・ DOOH広告がリーチしたユーザーの実店舗来訪率が上がる傾向となり、モバイル広告のみ露出したユーザーよりもDOOH広告のみ露出したユーザーのブランドリフト値が上がる傾向(※4)
・ モバイル/DOOH両施策の広告露出がある場合、ブランドリフト値が最大となる傾向(※4)
※1:イタリア市場におけるDOOH調査報告
出典:“Real DOOH,” GroupM & Kinetic, 2018
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※2: 他チャネルとDOOHの与えるSEM・SNSとの連動性対比
※出典:DIGITAL OUT OF HOME: REALIZING THE POTENTIAL by XAXIS
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※3: DOOH接触/非接触ユーザーの来店頻度調査
※出典:DIGITAL OUT OF HOME: REALIZING THE POTENTIAL by XAXIS
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※4: スマートデバイスとの併用によるDOOHのブランドリフト効果
※出典:DIGITAL OUT OF HOME: REALIZING THE POTENTIAL by XAXIS
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上記、DOOHの影響度を列挙させていただきましたが、「One to Many」コミュニケーションを可能とさせるDOOHは、その他「One to One」コミュニケーションに特化した既存デジタル施策との連動性が高く、ユーザーのオンラインアクティビティに大きく寄与する傾向にあることが読み取れるかと存じます。

本稿の前半部分として、DOOHの導入背景、市場傾向、実施利点とその影響力についてお伝えしてまいりましたが、いかがでしたでしょうか。次回は実際のケイパビリティやプログラマティックにアクセス可能な広告在庫種類について触れていきたいと思います。

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この記事のライター

結城 浩史

結城 浩史株式会社ハートラス

トレーディングディヴィジョン プロフェッショナル

米国ニューヨークでの出版企業を経て、2015年に株式会社ハートラス入社。広告運用コンサルタントとして60社以上の運用コンサル業務に従事。2017年より、複数の官公省庁及び独立行政法人のデジタルプロモーション設計と戦略を担当。グローバルのデジタル情報及び、プログラマティックバイイングのエコシステムに熟知。
※2017年全社年間MVP ※運用プラットフォーム数:50PL以上 ※実績国:80カ国以上

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